音声感情解析サービス「ESAS」を活用し、 オペレーターの音声をモニタリングしてうつ症状を早期に予測 ―産業医科大学と共同研究、音声感情解析技術による うつ症状早期検出モデルの実証開始―
コンタクトセンターの運営、コンサルティングと感情解析の研究・開発事業を行うCENTRIC株式会社(本社:東京都豊島区、代表取締役:山田 亮)のグループ会社で音声感情解析専門会社のESジャパン株式会社は、産業医科大学 産業生態科学研究所 人間工学研究室 榎原 毅 教授、産業精神保健学研究室 江口 尚 教授らと共同で、声から感情を可視化するテクノロジー、音声感情解析サービス*1「ESAS」(イーサス)を用いた、うつ症状の早期検出モデルの実証研究を開始しました。
*1 ESAS: Emotional Signature Analysis Solution
【共同研究の背景】
オペレーターの業務は感情労働*2の一つとも言われ、顧客の顔が見えない状況での電話対応・クレーム対応などでストレスがたまりやすく、メンタルヘルスや離職が大きな企業負担、社会問題となっています。本共同研究では、感情の適切なコントロールへの取り組みをさらに深めるために実施いたします。
当グループはこれまでにも感情の適切なコントロールへの取り組みとして、音声感情解析の結果を用いて、組織内のコミュニケーションから従業員の離職などを予測可能にする特許を取得、産業医科大学との共同研究でメンタルヘルスケアに関する論文を発表するなど、音声感情解析結果の活用に取り組んでまいりました。
この技術は、メンタルヘルスケア市場においても大きな可能性を秘めており、医療分野での患者の感情解析やWeb会議での顧客感情解析など、幅広い応用が期待されています。
*2 「感情労働」とは、業務中に感情のコントロールや表現が求められる職業に用いられる概念です。感情労働と捉えることが出来る職種として、かつては旅客機の客室乗務員が典型とされていましたが、現代では看護師などの医療職、介護士などの介護職、コンタクトセンターのオペレーター、官公庁や企業の広報、苦情処理、顧客対応セクション、マスメディアの読者・視聴者応答部門などが注目されています。
【共同研究の目的と概要】
本共同研究では新たな知見を探るべく、コンタクトセンターにおけるオペレーターの音声通話を経時的にモニタリングすることで、うつ症状を早期に予測することができるモデルの開発を目指すものです。CENTRIC熊本支店にてフィールド実証研究を実施し、その検証を行います。
また、研究成果は新たなメンタルヘルスケア予兆可視化サービスの提供に繋がると期待されています。産学連携により科学的な根拠に基づく予測モデルの開発を行い、将来的にはアプリケーションサービスとして、企業や医療機関に提供する計画です。
音声感情解析サービス「ESAS」はこれまでにさまざまな企業に導入され、音声認識&音声感情解析サービス、オンライン面接サービス、パーソナリティー診断サービスなどに活用され、今後は医療業界での感情解析や、Web会議などでの顧客の感情解析など様々な業界での活用も期待されています。このため、今回の共同研究の成果はコンタクトセンター業界のみならず、様々な業界でのメンタルヘルスケア支援などに波及することが期待されます。
共同研究を行う産業医科大学産業生態科学研究所人間工学研究室は、デジタルヘルス・テクノロジー(スマホ内蔵センサーやウエアラブルセンサーほか)を活用してライフログビッグデータを収集・解析することによって、働く人の健康障害の積極的予防に取り組んでいます。人間工学とは、多様なシステムにおけるヒトと他の要素との相互作用を理解するための学際的学問であり、ウェルビーイングとシステム全体のパフォーマンスとの最適化を図るために個人を取り巻くステークホルダー、物理環境、組織環境なども含めた包括的なアプローチ(システムズ・アプローチ)を推進しています。当該研究室は、人間工学分野において、医科大学で唯一の研究室であり、教授の榎原毅先生は国際人間工学連合(IEA)理事、日本人間工学会理事、国際標準化機構ISO/TC159(人間工学)国内対策委員会SC3分科会委員長などを歴任されておられ、日本の人間工学分野を牽引するトップランナーです。
【榎原教授からのコメント】
国内において、現在の仕事や職業生活に強い不安やストレスを感じる労働者の割合は53.3%(令和3年「労働安全衛生調査、厚労省)と高いことが知られています。とりわけ、コンタクトセンターのオペレーターは、常に高ストレスにさらされています。音声感情解析サービス「ESAS」×「人間工学」により、CENTRIC株式会社熊本支店の全面的なご協力を得て、フィールド実証研究をこのたび実施させていただきます。新たなメンタルヘルス予防策の効果検証を通じて、メンタル不調の早期予防に資する研究成果を発信し、社会還元していきたいと思います。
令和5年度より、コンタクトセンターオペレーターを対象とした音声感情解析技術のメンタルストレス対策応用に関する研究を実施してまいりました。これまでの成果として、音声感情解析技術を人間工学的組織介入アプローチに取り入れることで、メンタルヘルス対策に効果的である可能性を明らかにしてきました。このたびは音声感情解析技術とうつ病自己評価尺度(CES-D)の縦断的な関連性および予測モデルについて検証を重ねています。
■産業医科大学産業生態科学研究所概要:
産業生態科学研究所は、産業医学を専門的に研究・教育することを目的とする産業医科大学の附置研究所です。研究所には、快適環境部門、健康支援部門、社会環境部門、災害産業保健センターが設置されており、各専門分野における研究のほか、医学部及び大学院学生の教育、産業医学に関する卒後研修、産業医学に関する国際協力等の事業を行っています。