産業医科大学との共同研究 音声感情解析で1か月先のうつ症状リスクを予測するモデルに関する論文が採択

2025.11.07 ニュース

— コールセンター実務の音声から構築、職場の“早期アラート”につながる可能性 —
CENTRIC株式会社(本社:東京都豊島区、代表取締役:山田亮、以下「CENTRIC」)と当社の100%子会社である音声感情解析専門会社ESジャパン株式会社は、音声感情解析サービス*1「ESAS」(イーサス)を用いて、産業医科大学産業生態科学研究所人間工学研究室 榎原 毅 教授、谷 直道 講師、産業精神保健学研究室 江口 尚 教授らとの共同研究の成果である論文「Development of an Objective Early Detection Model for Depressive Symptoms Using Voice Emotion Analysis Technology: Empirical Prospective Cohort Study Among CallCenter Operators」(音声感情解析技術を用いたうつ症状の客観的早期検出モデルの開発:コールセンターオペレーターを対象とした実証的前向きコホート研究)が、日本産業衛生学会の公式ジャーナル 「Journal of Occupational Health」(英文誌) に採択されたことをお知らせします。本研究は、実務音声(コールセンター)を対象に、音声感情解析により約1か月後のうつ症状の出現を予測するモデルを検証したものです。
*1 ESAS:Emotional Signature Analysis Solution

<研究サマリー>
対象と設計:実務通話音声とCES-Dの縦断データに基づく前向き観察
主要結果:予測モデルのAUC1)は0.783。合成変数のカットオフ値0.334以上でオッズ比 7.782)を示し、一次予防(未然防止)と二次予防(早期発見・初期対応)双方での有用性が示唆された。

1)AUC(Area Under the Curve)とは、ROC曲線(受信者動作特性曲線)と呼ばれる検査性能を評価する際に用いられる面積を表し、検査や分類モデルの「全体的な性能」を数値で、1に近い方が性能が良いとする示す指標です。
2)音声データを用いた解析で(+)陽性群に判別された方は、(-)陰性群に判別された方と比較して7.78倍一ヶ月後のうつ症状を呈する可能性が高くなることを意味します。
※本研究は職場の健康管理を補助する指標を検討するものであり、診断を目的とするものではありません

メンタルヘルスケア市場は、近年急速に拡大しており幅広い分野での需要が増加しています。この中で、音声感情解析技術は、特にメンタルヘルスケア予防領域における新たなソリューションとして注目されています。

■産業医科大学 産業生態科学研究所 人間工学研究室(教授:榎原 毅)コメント
厚生労働省の令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」では、仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスがあると感じている労働者の割合は68.3%となっている一方で、メンタルヘルス対策に取り組む事業所は63.2%に留まっており、国の過労死等防止対策大綱の数値目標である80%とは隔たりがあります(令和7年版「過労死等防止対策白書」、厚生労働省)。このような背景を鑑み、私たちは事業所内でメンタルヘルス不調を早期に把握するための仕組みとして「ESAS」×「人間工学」により、日常の音声データから約1か月先のうつ症状を予測するモデルの検証を行いました。今後、様々な業種・業態で働く人の音声データから“こころの健康”の度合いを早期に検出できる仕組みの構築と社会実装に向けた検証を進めたいと思います。

<関連トピックス|ニュースリリース>
2023/4 公表:CENTRIC、音声感情解析「ESAS」に関する特許を取得
https://www.atpress.ne.jp/news/352572
2024/9 公表:うつ症状早期予測モデルの実証開始 本論文の前段となる共同研究リリース
https://www.atpress.ne.jp/news/408921
2024/10 公表:音声感情解析を用いた組織的介入は、コールセンターにおけるオペレーターのメンタルヘルス対策に有効か Journal of Occupational Health掲載
https://www.atpress.ne.jp/news/413435

<参考情報>
① What digital health technology types are used in mental health prevention and intervention?(Journal of Occupational Health)
11のデジタルヘルステクノロジーカテゴリーの一つにvoice and emotion analysisを明記
https://academic.oup.com/joh/article/66/1/uiad003/7404914
② DeLight Project(AMED):DHTの学術研究トレンド(2003–2022)
研究トレンド:DeLight Project(TR-Article)によるIEEEデータベース解析では、2003–2022年の技術論文数で音声・感情解析が最多(11分類の中で最上位)。今後のメンタルヘルス領域での活用が期待される。
https://delight.sanei.or.jp/healthcare_question/tr_article/individual.html?entry_id=62

<ESASサービスの詳細はESジャパンホームページよりご確認ください>
https://www.es-jpn.jp/
音声感情解析サービス「ESAS」はこれまでにさまざまな企業に導入され、音声認識&音声感情解析サービス、オンライン面接サービス、パーソナリティー診断サービスなどに活用され、今後は医療、メンタルヘルスケア業界での感情解析や、Web会議などでの顧客の感情解析など様々な業界での活用も期待されています。今回の共同研究の成果はコンタクトセンター業界のみならず、様々な業界に波及することが期待されます。本研究成果の社会実装と保護に向け、知財(出願中・詳細非開示)・法務・倫理の観点から体制整備を進めています。